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<title>風の記憶</title>
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<title>転校生　2</title>
<description> 「ここはね、生徒会がほとんどの実権を握ってるの」放課後。この学園のことをほとんど知らない優は、率直に美緒に聞いてみた。教室には２人と聖菜の姿しかなく、他のクラスメイトは下校したらしい。鈴鹿は用事があるといって席を外していた。美緒の話を要約すると、こうだった。この学園は財閥の要人の子息が多く在籍しているらしい。ただし、あくまでも表向きは、であるが、財閥間の権力闘争は持ち込まないのが原則である。しかし
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<![CDATA[ 「ここはね、生徒会がほとんどの実権を握ってるの」<br /><br />放課後。<br />この学園のことをほとんど知らない優は、率直に美緒に聞いてみた。<br />教室には２人と聖菜の姿しかなく、他のクラスメイトは下校したらしい。<br />鈴鹿は用事があるといって席を外していた。<br /><br />美緒の話を要約すると、こうだった。<br /><br />この学園は財閥の要人の子息が多く在籍しているらしい。<br />ただし、あくまでも表向きは、であるが、財閥間の権力闘争は持ち込まないのが原則である。<br />しかしながら、今朝絡まれたとおり、ある程度の派閥はできているらしい、が。<br /><br />その中でも選ばれた数人が生徒会に入る。<br />正確には生徒会長が選挙によって選ばれ、生徒会の人選は会長が行う。<br /><br />現在の会長は永澤新一。<br />財閥のひとつ、「水沢」のセカンドの後継者である。<br /><br />セカンドの後継者がこの学園に入学することはそう珍しいことではないが、<br />最高でもセカンドに次ぐ者、サードであることが多いのも事実である。<br />そんなセカンドの後継者を差し置いて『会長』を務める勇気ある人物がいることはなく、<br />彼が入学した時点から、次期会長とみなされていた。<br /><br />学園のほとんどの生徒が、卒業後に世界を動かす人物であることから、<br />その予行練習として学園内の自治は生徒会に任されている。<br />加えて財閥の次期セカンドであり、<br />学園の主要スポンサーの子息である彼に対しては、教師陣も一目置かざるを得ない。<br />現在の生徒会がこの学園に及ぼす力は、かなりのものであった。<br /><br />「永澤会長はね、すごく頭の良い方だよ」<br /><br />どうやら彼女は会長にあこがれているらしい。微かに頬を染めながら、美緒が行った。<br /><br />「そうかなぁ。私は都築先輩の方がいいなぁ」<br /><br />都築先輩、というのは、副会長の都築諒のこと。<br />財閥の関係者ではないが、各学年にいる5人の特待生の1人で、ずば抜けた知性の持ち主らしい。<br /><br />「ちょっとクールでとっつきにくいけど、むっちゃカッコいいの！」<br /><br />聖菜は美緒にグイと顔を近づけて力説する。<br />こちらは明らかに興奮しており、美緒は、あ～そうなんだぁ、と首を竦めつつ答えた。<br /><br />「でもね」<br /><br />２人は顔を見合わせて、にっこり微笑んだ。<br /><br />「やっぱり人気は高塚先輩かな」<br />「そうそう！かっこいいし、スポーツ万能！なのに変に気取ったとこないしね」<br /><br />ふ～ん、と聞きつつ、美緒は少しだけ不安になっていた。<br />一番気になる人物の名前が、この２人の口からはまったく出てこなかったからだった。 ]]>
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<dc:subject>聖翔学園物語</dc:subject>
<dc:date>2009-11-13T17:17:45+09:00</dc:date>
<dc:creator>榎鈴</dc:creator>
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<title>癒し姫　２</title>
<description> 魔道都市フィリシア。ここは国ではなく、魔道学院を中心に栄えている魔道都市である。多数の国が存在し、常に国同士が争い続けているものの、ここだけはどの国からも干渉を受けず、中立を保っている。もちろん、我が物にしようと侵略をたくらんだ国はこれまでにもあったが、魔道都市の名のごとく、強大な力を持つ魔道師が多数所属するここを侵略するのは至難の業で、その全てを退けてきたのである。フィリシアの中心―聖王宮の長い
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<![CDATA[ 魔道都市フィリシア。<br />ここは国ではなく、魔道学院を中心に栄えている魔道都市である。<br /><br />多数の国が存在し、常に国同士が争い続けているものの、<br />ここだけはどの国からも干渉を受けず、中立を保っている。<br /><br />もちろん、我が物にしようと侵略をたくらんだ国はこれまでにもあったが、<br />魔道都市の名のごとく、強大な力を持つ魔道師が多数所属するここを侵略するのは至難の業で、<br />その全てを退けてきたのである。<br /><br /><br />フィリシアの中心―聖王宮の長い廊下を、一人の少女が歩いていた。<br />廊下は中庭に面し、綺麗に刈り取られた芝生と大きな木が太陽の光を浴びてキラキラと輝いていた。<br />それと対照的に、少女の表情は暗い。<br /><br />「結局、お前が行くことになるのか？」<br /><br />声がかかり、少女が振り返ると、柱に身を預け、両腕を組んで立つ青年が目に入った。<br />そこにいたのは、黒衣で身を包んだラーヴィスだった。<br /><br />「他に動ける人がいないんだもん。仕方ないでしょ」<br /><br />薄いラベンダー色の瞳が彼を捉え、<br />肩にかかる薄茶色の髪をうるさそうにかきあげ、少女が言った。<br /><br />この都市の意思決定機関であり統治機関である元老院。<br />先ほど少女はそれに属するお歴々に呼び出され、命を受けた。<br /><br />それは小国ラ・ダイからの依頼で、ラ・ダイの姫ユルディの具合が悪いので、<br />治癒の法を使うことができる者を派遣してほしい、と。<br /><br />フィリシアの魔道学院は、攻撃や防御などが専門の魔道と、治癒が専門の治癒法とがある。<br />本人にその素質さえあればどちらも学ぶことはできるが、<br />ほとんどの場合はどちらかの素質しかもたない（もちろん、大多数の人物はそのどちらも持たないのだが）ため、どちらかにしか属さない。<br />その数少ない例外が、彼女である。<br />少女は、魔道が専門ではあるものの、治癒法も人並み以上に使うことができるという、<br />このフィリシアでも片手の数しかいない存在なのだ。<br /><br />現在ラ・ダイは他国と交戦中。それも、かなり激しい戦いが続いていると聞いている。<br />自分の身を守る術をもたない治術師を派遣するのは、危険極まりない。<br />それでなくとも、治癒法を使える存在は極端に少なく、貴重であるのに―。<br /><br />元老院は悩んだ末、少女に白羽の矢を立てた。<br />断っても良い依頼であったが、あの『噂』が気になるのも確かだったからだ。<br /><br />危険だとわかっていたが、少女は依頼を引き受けた。<br />話を聞けば聞くほど、自分が適任だと思ったから。<br />そして、ユルディ姫のことが気になるから。<br /><br />「オレも行く」<br /><br />身体を起こし、少女に近づいてくる彼の真意を確かめるように、<br />少女はじっと瞳を見つめた。<br /><br />「ラ・ダイは危険だ。いろんな意味で」<br /><br />真意を見抜くように鋭かった少女の視線がふっと緩み、唇の端がゆっくりと持ち上がった。<br /><br />「じゃあ、護衛お願いね！久々ね、ラーヴィスと旅するのって」<br /><br />楽しげな少女の声に、これからのことを考えて、心の中で苦笑するラーヴィスだった。 ]]>
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<dc:subject>癒し姫</dc:subject>
<dc:date>2009-10-29T23:29:51+09:00</dc:date>
<dc:creator>榎鈴</dc:creator>
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<title>転校生　1</title>
<description> その日、聖翔学園高等部に一人の少女が転入して来た。「転入生だ。名前は宮城優。仲良くするようにな」 ホームルームでの担任の紹介はそっけないもので、彼女が自己紹介するとすぐに空いていた席を示した。生徒たちも、彼女に対してあまり関心を示していないようで、ちらりと優の顔を見ただけで、表情ひとつかえてはいない。外部者に対する無関心さが伺われたが、優がそれまでいた学園―そこは女子校であったのだが―も、そこも同じ
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<![CDATA[  その日、聖翔学園高等部に一人の少女が転入して来た。<br /><br />「転入生だ。名前は宮城優。仲良くするようにな」<br /><br /> ホームルームでの担任の紹介はそっけないもので、彼女が自己紹介するとすぐに空いていた席を示した。<br />生徒たちも、彼女に対してあまり関心を示していないようで、ちらりと優の顔を見ただけで、表情ひとつかえてはいない。<br />外部者に対する無関心さが伺われたが、優がそれまでいた学園―そこは女子校であったのだが―も、そこも同じ様子であった。だからさして、気にもとめていなかった。<br /><br />ホームルームが終わると、今までの静けさが嘘のように教室内が騒ぎ始めた。<br />このあたりは、年相応の行動だ。なんとなくほっとしていた。<br /><br />そんな中、一人の少女が、正確にはその周囲に取り巻きを連れていたが、優の目の前にあらわれた。切れ長の瞳が優を見下している。<br />彼女は何の挨拶もなく、当然のように話を切り出した。<br /><br />「あなたのお父様は、どこに属していらっしゃるの？」<br />「え？」<br /><br />何のことか分からず、優はキョトンとした。<br />だが質問して来た少女の方はそんな優の態度が気に入らなかったらしく、いら立ちも露に質問を繰り返す。<br /><br />「だから、あなたのお父様はどこの財閥に属しているのか聞いてるの」<br />「早くおっしゃいなさいな。私たち、それほど暇ではありませんのよ！」<br /><br />取り巻きの一人である少女がそう畳み掛ける。<br />その高圧的な態度が気に食わなかったが、転校早々問題を起こすわけにもいかない。<br />内心の不快さを封じ込め、それでも表面上はにこやかに答える。<br /><br />「篠宮だけど」<br />「あら、奇遇ね」<br />彼女は勝ち誇ったようにニヤリと笑った。<br /><br />「私のお父様も、篠宮なのよ。何かあったら、私の所にいらっしゃいな。同級生のよしみで、悪いようにはしなくてよ」<br /><br />いいたいだけ言って気が済んだか、声も高らかに笑いながら去って行った。<br />この笑い声は答える気力をも削ぐ効果を生み出すようで、優は呆然として、それを見送ることしかできなかった。<br /><br />圧倒された、と言うより、呆れてしまって言葉もなかった、というのが本音である。<br />権力を振りかざす、典型的例だ。聞いているこちらの方が恥ずかしくなってしまう。<br />あんなのが今時いるのかと思いながら、しばし我を忘れる優だった。<br /><br />「気にしないでね。あんな人ばかりじゃないから」<br />背後からかかった声に振り向いた。優の心を読んだかのように、その声の持ち主は言った。<br /><br />そこには二人の少女がいた。にこにこと笑いながら、後ろの席に座っていた少女が手を振った。<br />感じのよい、先程の彼女とは正反対のタイプだ。<br /><br />「わたしは森聖菜。聖菜って呼んでね。で、こっちは」<br />「高林美緒。わたしも美緒でいいからね」<br /><br />美緒と名乗った少女は、聖菜の隣の席に座っていた。片肘を机につけ、それにあごを乗せている。<br />悪戯っぽく笑う彼女もまた、優に好意的な様子だった。<br /><br />「彼女の父親ね、篠宮の中でも上の方にいるから。それを鼻にかけてるだけなのよ」<br />「ほっとけば害はないわ。何か言ってきても、はいはいって聞き流せばいいからね」<br /><br />息の合った所を見せ、達観した考えをもつ二人の少女は、互いに顔を見合わせてくすくすと笑った。<br /><br />「それよりも大切なことがあるのよ。この学園はね、生徒会がとても強い力をもってるの。先生たちも口出しができないくらいにね。だから、学園内では会長には逆らわないのが得策よ」<br />「そうそう。あんなのよりも、よっぽど怖いわよ」<br /><br />美緒は優に顔を寄せて声を低め、先程の少女の方をちらりと盗み見しながら言った。<br />実感がわかず、首をかしげた優の表情が不安そうに見えたのか、聖菜が片目をつぶって見せた。<br /><br />「大丈夫よ。わたしたちには強い味方がいるから」<br />「味方って？」<br />「生徒会に、鈴鹿の従兄がいるのよ。だからね、何かあったらその人に頼ればいいわ」<br />「その分、わたしが無料奉仕してるんだけどね」<br /><br />背後からかけられた声に、優は振り返る。<br />大きな茶色の瞳が印象的な少女。優に見劣りしない端整な容貌。<br />綺麗というよりも、どちらかと言えばかわいらしい顔付きの少女である。<br /><br />優の隣の席に書類の束をばさりと置く。かなりの量があるそれは、一枚一枚にきちんと清書された文字がつづられていた。少女は大きく息をつきながら、倒れ込むように椅子に腰掛ける。<br /><br />「やあっと終わったわよ。まったく、すぐ人をあてにするんだから」<br />「ああ、またやってたの？」<br /><br />聖菜はからかうように言った。<br />三人の中では、鈴鹿がやっていることは公然の秘密だ。<br />生徒会の仕事を密かに任せられている（やらされているとも言うが）、ということである。<br /><br />三人の話を要約すれば、彼の従兄は、どうやら面倒な事務雑務処理を彼女に肩代わりさせているらしい。そしてそのことを、どうやら生徒会のメンバーすら内緒にしているようだ。<br /><br />「こんなことばれたら大目玉だよねえ」<br /><br />  鈴鹿と呼ばれた少女はつぶやくと、優しく笑った瞳を優に向けて言った。<br /><br />「このこと、誰にも内緒ね。ばれたらやっぱり、あんまりよくないだろうし。私は橘鈴鹿。よろしくねっ」<br /><br />笑顔がこぼれた。<br />人を包み込む、優しいほほ笑みだった。<br />この三人とならうまくやっていけそうだと思った。<br />できれば、先程の少女は遠慮したいけれど、相手が篠宮ならそうはいかないかもしれない・・・。<br /><br />その時、一時限目の始まりを歌うチャイムが鳴った。それとほぼ同時に、教師が姿を現す。<br />授業の進度は前にいた学園とほぼ同じだったため、困ることはなかった。<br /><br />教科書類は鈴鹿が見せてくれたし、教師も優が転校生だと知っていたようで、授業の進度の妨害になるとでも思ったか、特に彼女を当てることもなかった。<br /><br />そんなふうにして、無事初日が終わり、放課後になった。 ]]>
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<dc:subject>聖翔学園物語</dc:subject>
<dc:date>2009-10-27T16:41:04+09:00</dc:date>
<dc:creator>榎鈴</dc:creator>
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<title>癒し姫　1</title>
<description> 「・・・という噂があるらしいよ」黒髪に漆黒の瞳、そして黒を基調とした服装。太陽を背に、それとは正反対の容姿を持つ青年は、端正な顔立ちに人好きのする笑みを浮かべ、機嫌悪そうに机に頬杖をつく少女を見つめていた。暑い季節の昼下がり。窓から入ってくる陽光は、少女のもとまでは届いていない。それもあり、石の壁を持つ室内は、ひんやりとしていて涼しい。少女はふぅとため息をつき、閉じていた瞼をゆっくりと開くと、アメ
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<![CDATA[ 「・・・という噂があるらしいよ」<br /><br />黒髪に漆黒の瞳、そして黒を基調とした服装。<br />太陽を背に、それとは正反対の容姿を持つ青年は、<br />端正な顔立ちに人好きのする笑みを浮かべ、<br />機嫌悪そうに机に頬杖をつく少女を見つめていた。<br /><br />暑い季節の昼下がり。<br />窓から入ってくる陽光は、少女のもとまでは届いていない。<br />それもあり、石の壁を持つ室内は、ひんやりとしていて涼しい。<br /><br />少女はふぅとため息をつき、閉じていた瞼をゆっくりと開くと、<br />アメジストのように深い紫色の瞳が顕となった。<br /><br />「ほっとけない、でしょ」<br />にっと笑う青年をジロリと睨み付け、再びはーっと息をつく。<br /><br />少女は机の上にあった呼び鈴に手をのばし、チリンと鳴らした。<br />それを聞き、一人の侍女が顔を見せ、恭しく一礼した。<br /><br />「皆の召集を。・・・あなたも来るわよね、ラーヴィス」<br /><br />後半は青年に向けて。<br />青年は小さく肩を竦めたが、否定の返事をすることはなかった。<br /> ]]>
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<dc:subject>癒し姫</dc:subject>
<dc:date>2009-10-23T13:22:55+09:00</dc:date>
<dc:creator>榎鈴</dc:creator>
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<title>物語の始まり</title>
<description> 六財閥の一つ、『篠宮』。篠宮は六つの財閥の中でも特に力をち、『羽柴』と呼ばれる財閥に次ぐと言われている。その篠宮の総帥には、後継者としてすでに父の片腕となっている息子、そして娘がいた。日々多忙を極める篠宮の総帥は、久方ぶりの休日を娘・優とともに過ごしていた。年齢を重ねるにつれ今は亡き母親に似つつある優に、人並みならぬ愛情を注いでいた。「お父様」少女が振り返った。スカートがひるがえり、風をはらむ。同
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<![CDATA[ 六財閥の一つ、『篠宮』。<br /><br />篠宮は六つの財閥の中でも特に力をち、『羽柴』と呼ばれる財閥に次ぐと言われている。<br />その篠宮の総帥には、後継者としてすでに父の片腕となっている息子、そして娘がいた。<br /><br />日々多忙を極める篠宮の総帥は、久方ぶりの休日を娘・優とともに過ごしていた。<br />年齢を重ねるにつれ今は亡き母親に似つつある優に、人並みならぬ愛情を注いでいた。<br /><br />「お父様」<br />少女が振り返った。スカートがひるがえり、風をはらむ。<br />同時に、背中まである長い黒髪も揺れた。<br />つややかな唇をペロリとなめ、端整な容貌に笑みを浮かべる。<br /><br />視線の先にいるのは、もちろん彼女の父親である。<br />彼は苦笑を交えてなんだと聞いた。<br />彼にはもう分かっているのだ、彼女が何か「お願い」をしてくるのだ、と。<br />  彼の期待を少しも裏切ることなく、優が紡いだ言葉はこうだった。<br /><br />「お願いがあるんだけど・・・」<br /> ]]>
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<dc:subject>聖翔学園物語</dc:subject>
<dc:date>2009-10-22T09:47:27+09:00</dc:date>
<dc:creator>榎鈴</dc:creator>
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